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Channel: 宮田マスターのGERSHWINレポート
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宮田あやこ 共和町クリスマスコンサート

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年の瀬の12月15日(日)岩内郡共和町音楽鑑賞の会の皆さんに招かれ共和町生涯学習センター大ホールで宮田あやこは歌った。共和町はらいでんスイカ、メロン、アスパラなど農作物の産地として知られている人口6000人ほどの町だ。夏訪れるときっと緑鮮やかな空高い北海道の大地を感じられる場所なのだろうけれど、さすがに冬は白い世界の中皆さんひっそりと暮らしている印象だ。おまけに当日は冬の嵐の予報。風速25~30メートルにもなろうという。コンサート前夜ガーシュウィンのお客様から共和町は陸の孤島になるから2~3日は帰って来られないかも、などと脅かされていたりもした。
                                         

僕もあやこも初めての共和町訪問だったが、僕の父の母方の祖先は明治32年に広島県からこの地に移植してきたのだ。時代は巡り巡りあやこを通してこの地に呼び寄せられたのも何かの縁なのかもしれない。今回のコンサートの発起人で尽力してくださったのが地元で建設業を営む鶴見浩さん。15~6歳のころあやこのデビューアルバム「レディ・モッキン・バード」を愛聴してくださっていて、昨年インターネットであやこを見つけ、ガーシュウィンを訪ねてくださり、強い働きかけで地元音楽鑑賞会、町を動かし今回のコンサートを実現させてくださった。札幌以外のコンサートはだいたい話だけで終わることが多いので、彼の行動力には驚かされた。

コンサート当日嵐の予報ははずれ、札幌はたまに陽が差し、雪もそんなに多くはない。鶴見さんが迎えのため涼しい顔で定刻通り札幌の我が家に到着した。ちょっとしたドライブ気分で2時間少々の共和町へ向かう。さすがに冬の日本海は大荒れで、音楽に例えれば追分、演歌の世界。北島のサブちゃんの出番。共和町でジャズのコンサートが開かれるのは鶴見さんによると記憶がないという。昨年は三原綱木がギター片手にカラオケコンサートをやっていったそうだ。鶴見さんはしきりに観客動員のことを気にかける。採算性ではなく観客が少ないとあやこに申し訳ないと心から思っていることが感じられた。

会場の生涯学習センター大ホールに到着。音楽鑑賞会の方、町のスタッフ皆さん休日を返上して働いていてくださる。ボランティアの若い人たちも多い。外は雪でも会場内は静かな熱気にあふれていた。演奏メンバーたちもすでに到着している。今回はピアノ&アレンジの山下泰司を除き初共演のメンバーだった。皆さん売れっ子でスケジュール調整が大変だったけど、理想のメンバーを集めることができた。ジャズ、ロック、ブルース、日本語によるオリジナル曲とあやこの共演者は多様な音楽性がなければ勤まらない。たった一度のリハーサルで1時間40分のコンサートをこなすのだから、彼らはただ者じゃない。

ブライアン・ウィルソン一人多重録音による「ラプソディー・イン・ブルー」がオープニングで鳴り響きそれに山下泰司のピアノが重なりコンサートは始まった。ドラムは大山淳、引き出しの多さには驚かされた。パワフルでバンドをぐいぐい引っ張る。ベース釜鈴徹、ポール・マッカートニーのベースが好きという彼、ポールが影響を受けモータウンを支えたジェイムス・ジェマーソンばりのグルーブあふれるプレイはお見事だった。ギター古舘賢治、リンダ・ロンシュタットのスタンダードアルバムやジェイムス・テイラーのカントリー&ブルースアルバムを見ごとに弾き分けているボブ・マンという素晴らしいギタリストがいるのだけど、古舘賢治のプレイはボブ・マンを彷彿させた。アイデアの豊かさは半端ではない。そして山下泰司、素晴らしいアレンジと安定したプレイはますます磨きがかかってきた。

当日の観客はお年寄りの姿が多く見受けられたが、皆さん一生懸命に聴いてくださった。音響もよく、照明もボランティアの方たちが(夏はアスパラを作っているそうだ)工夫を凝らしている。皆さん周到な準備を重ねたようだ。アンコールの拍手の大きさにはびっくりした。アンコールがなかったら、スタッフの方たちお願いね、と頼んでおいたのが杞憂に終わった。入りもこの悪天候を考えればなかなかのものだった。人口190万の札幌に置き換えれば札幌ドームに入りきらない観客を集めたことになる。

翌朝、一泊した温泉旅館の部屋から一望できる岩内港を眺めていたら、突然虹がかかった。昨晩のラストナンバーは「虹の彼方に(Over The Rainbow)」だったことを思い出した。岩内のバスターミナルまで鶴見さんが送ってくださった。夏はヨットに乗りに来てね、などと雑談していてバスの発車時刻になったら、鶴見さん突然大粒の涙を流し始めた。言葉はなかったけど、コンサート実現のためのご苦労は相当なものだったのだろう。あやこは彼を抱きしめ、感謝の気持ちを表し別れを惜しんだ。バスの車窓からは家で暮らす皆さんのお姿が見えたように思えた。114年前、冬の寒さ厳しいこの地に移り住んだ我が祖先の姿もそこに重なった。

宮田あやこ EARLY CHRISTMAS JAZZ CONCERT 2013
共和町生涯学習センター大ホール セットリスト

1.My favorite things
2.Dream a little dream of me 
3.Someone to watch over me
4.It’s all right with me 
5.Try to remember 
6.The girl from Ipanema~Be my baby 
7.Norwegian wood
8.Theme from The way we were
9.Raindrops keep fallin’ on my head(Inst)
10.蒼ざめた朝
11.Alaska
12. It’s too late 
13. Over the rainbow 
アンコール
1.I’ll be home for Christmas~White Christmas
2.Kansas city 


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